嫦娥は不死の薬を飲み、月へ昇ります。この短い筋書きから、願望、別離、不死をめぐる多くの物語が生まれました。弓の名手である后羿と深く結びついていますが、彼女の動機も夫の運命も、どの語りでも同じではありません。

この物語について

主な筋書きは大英図書館が紹介する一つの通俗的な版に基づきます。唐代の鏡は図像の伝統を示す資料であり、神話が史実である証拠ではありません。

薬を飲み、空へ昇る

大英図書館が紹介する通俗的な一つの版では、后羿が大地を脅かす十個の太陽のうち九個を射落とします。その後、西王母から二人で分けるはずの不死の薬を得ますが、嫦娥は一人で飲んでしまいます。彼女の体は夫の手が届かないほど高く昇り、月に住むことになります。不死と別離が同時に訪れ、贈り物に見えた薬は複雑な意味を帯びるのです。

古い器物にも描かれた月の世界

この物語は、現代の絵本だけで知られるものではありません。メトロポリタン美術館にある八〜九世紀の青銅鏡には、月の女神や兎など、月に関係する図像が表されています。兎は杵と臼で仙薬の材料をついています。こうした器物から、人々が口承や文章だけでなく、身の回りの物質文化を通しても神話の登場者に出会っていたことがわかります。

一つの月、さまざまな物語

ほかの版は、嫦娥の行動を異なる形で説明します。薬を盗んだとする話、好奇心を強調する話、薬を守るためだったとする話では、彼女への評価も変わります。それらを説明なくつなぎ合わせて、唯一の原型にするべきではありません。中秋節には、月へ向かう物語が再会への思いと響き合います。人々は同じ月を見上げますが、女神はなお、人の手の届かない場所にいるのです。

出典と参考資料

  1. British Library, International Dunhuang Programme — Chang-E
  2. The Metropolitan Museum of Art — Mirror with Moon Goddess and Rabbit
  3. British Museum — Chang’e
  4. ChinaCulture — an alternative account of Chang’e and the elixir
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